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海の夫人(新国立劇場 5/24 13:00) [観劇メモ(ヅカ以外)]

イプセン。と言えばフェミ文脈で登場する『人形の家』しか知りません。しかも観たことない。日本では大正時代に演じられたもの…すごく古いものだ と思い込んでました。

なんとなんと。今にも通じるテーマだし、セリフが絶妙で、全然面白い。女性の自由が軸になっているんだけど、それはとっかかりであって、人間そのものについて描いている。120年以上前のノルウェーの人が、こんなことを考えていたんだなあ、と驚いた。しかも男性。


実直で優しいお医者さんの家に後妻に来たターコさん、義理の娘たちにもなつかれず、生まれた子どもも死んでしまい、昔の恋人の幻に悩まされ、はためには心を病んだように見える。でもそれは「自由」への飽くなき追究だった。という話。

ヅカファン的には『エリザベート』っすね。お医者さんがフランツで、昔の恋人がトート。

昔の恋人が、単なる幻じゃなくて、本当に彼女を迎えに来るんですわ。でも、黒装束でどこか幻っぽくもあって、わざと生々しさを排除した演出になってるの。それがきわめてトートっぽい。

ちょうどエリザベートと同じ時代の話だ。こういう時代、純粋な意味で「自由」であろうとする女性は、精神を病んだようにしか見えないんだろうな あ。

なんと、この戯曲が書かれた年は、ノルウェーではじめて女性の貯金が許されたんですって。ということは、それまで女性名義の財産は許されていな かったということ! そんな時代に、親がいなくなったら自分はどうやって生きていけばいいんだろうという不安から、結婚。妻に先立たれて娘の世話を誰にしてもらえばいいんだろうというやもめと、利害関係が一致して、結婚。「売り買い」と言ってました。今だってそういうことはあるよね。この時代ほどじゃなくてもあるよね。

その「売り買い」から逃れたいのか逃れたくないのか煩悶する主人公と、同時並行して進む義理の娘の結婚話があるのも面白い。この綺麗なお嬢さん は、家事に追われる毎日ではなく、勉強をしたいと願っているんだけど、その実現のためには好きでもない男と結婚するしかなくて、「売り買い」を成 立させてしまうの。

ほかにも、このお嬢さんに言い寄る自称芸術家が「僕が南の国で芸術するのを待っていてね、でも僕が帰ってきたら君はおばさんになっちゃってるから 結婚しないかな」とか言うのも、ぞーっとする。しかも、とてもすがすがしく言うのがすごく笑える。今もいるよね、こういう男。

こんなふうに同じテーマがいろんな形でアレンジされて同時に奏でられているのが上手い。

そこに、子どもらしい残酷さを持った次女が、これらを引っ掻き回しながら問題点をあらわにしていく。

船のデッキのような素材で、船底のような形をした装置を、観客が取り囲む形。絵描きや観光ガイドをしているおじさんが状況説明をするだけで、家や 山やいろんな場所になる。

ターコさん、年齢設定よりは上なんだろうけど、圧倒的な存在感でその狂気にも説得力を感じました。夫役の村田雄浩は見るからに実直。いい組み合わ せだと思ったな。長女の太田緑ロランス、横顔がもっすごく綺麗。次女の山 崎薫って何歳なんだろう、永遠の子ども役者か。自称芸術家の橋本淳くん、 ひどいこと言ってるんだけど憎めないのが、味。

イプセンの作品、ほかのも是非観たいと思いました。